宮崎駿の“世界”
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人気ランキング : 328,768位
定価 : ¥ 987
販売元 : 筑摩書房
発売日 : 2001-08 |
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問題外 |
愚本。この一言に尽きる。
宮崎の作品の場面場面を事細かに再現してくるが、いまさらルパンの空中平泳ぎだのナウシカの飛翔だのをくどくど文字で説明することのどこが評論なのだろう。作画技術の分析でもあれば別だがそういったものはかけらも見られない。「ビデオで観ておけ!」で済んでしまうことにどうしてこうも無駄な労力を費やすのか。
そのくせ肝心の踏み込みはあまりに浅い。宮崎の発言や関連情報のだらだらとした切り貼りに終わってしまっている。著者独自の視点や切り口といったものがみあたらない。これでは、これまで世に出たデータ本や公式ガイド本のよせあつめと批判されてもしかたあるまい。盲目的な宮崎ファンのこしらえたエセ評論本。あえて断言させていただく。
そして、こんな代物がサントリー文芸賞とやらを頂戴できてしまうとは嘆かわしい。絵がきれいで動きがかっこいいというだけで評価してしまう今のアニメ批評の貧困さがここにも現れているといえよう。
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宮崎アニメの映像快感の解説 |
この本は宮崎アニメを正しく切り取って解説できている良書といえる。はっきりいってオタク向けの深い内容だが、だからこそ作品をじっくり腰を据えて、何十回も見た宮崎アニメファンにとってはより一層宮崎アニメを楽しむための必須本です。
特に作者がリアルタイムで魅了された宮崎作品の原点「未来少年コナン」は2話ごとに解説されており、あらためてストーリーに知らず知らずぐいぐい引っ張られていたのはこういうことだったのか!宮さんのこんな意図が…など、いうまでもない宮崎駿の天才ぶりがより一層具体的になりました。コナンほどの作品でも当時のリアル主義アニメの時代にあっては、ナウシカ・ラピュタを待たなければいけなかったのかと…。