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ソウ完全解読

 

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■4   ソウで学ぶ精神医学知識
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【読者の質問】
 はじめのゲームの自殺未遂者ポールの助かる道はあったのか?
 (ワイヤーから抜け出すか、動かず時間がたち、ドアが閉まって死ぬ
か・・でした・・よね?)

【私の考え】
 この質問に正しく答えるためには、自殺常習者の心理についての知識が
必要です。
 ですから、この「医学知識」のコーナーでお答えしましょう。

 ポールは自殺未遂の常習者でした。
 そして、彼に「命の大切さ」を教えるのが、このゲームの目的です。
 
 自殺常習者が最もよく使う方法は、リストカットです。
 手首をカミソリやカッターで切る、という方法です。
 
 つまり、ポールがカミソリ・ワイヤーの部屋に閉じ込められたのは、彼
がカミソリによる自殺未遂の常習者であったから、と推測されます。
 放火魔マークが、引火性ジェルの部屋に閉じ込められたのと同じです。

 自殺常習者は、いつも「死んでやる」とか「死なんか怖くない」と言い
ます。
 しかし、本心は反対です。
 決して死にたくないのです。助けて欲しい。自分のことを心配してほし
い。他の人の気を引くために、「死んでやる」と言うわけです。
 
 その証拠に、自殺する前に「今から自殺する」という電話をかけたリ、
メールをしたりしてから、行動に移します。それは、助けて欲しいからで
す。本当に死にたい人は、誰にも言わず、突然自殺を実行します。

 「死」をまじかに控えてたジグソウにとっては、そうした自分の「死」
を道具にして他人の気持ちを引こうとする行為は許し難いものがあったで
しょう。

 カミソリワイヤーの部屋の脱出法。
 アダムに用意された答が、「自分の足をノコで切る」だったように、こ
のゲームの参加者には、相当の自己犠牲が要求されます。つまり、カミソ
リ・ワイヤーをかき分けて、全身血だらけになって、全身に百箇所くらい
の切り傷をおって、大量の出血で生きるか死ぬかのギリギリの状態になっ
てまですれば、助かったのだと思います。

 切り傷をおわずに、五体満足なまま助かる方法はなかった。
 それは正しい。質問者のご指摘通りです。

 ジクゾウのゲームは、何の犠牲も払わずに勝つことはできないのです。

 ポールは普段はカミソリで、自分の身体に致命傷にならない創をつけて、
「自殺だ。自殺だ」と騒いでいたでしょう。
 本当に自分の身体に傷をつけるとはどういうことかも、考えもせずに。

 だから、ジグソウは、それを教えようとした。
 自分の身体を切るということは、痛みを伴うし、出血多量の危険がある
のだ・・・と。

 結局、ポールは犠牲を払うことが出来なかった。
 だから、何もできないで、カミソリ・ワイヤーに締め付けられて死んで
しまった。
 「死」をひからめかしていながら、本当の「死」について考えたことな
どなかった。
 「死」の恐怖に直面して何もできなかった、ということなのでしょう。

 さりげない描写ながら、自殺者の心理も徹底して考え抜かれていると思
います。

 

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