宮崎駿の仕事―1979~2004
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人気ランキング : 98,723位
定価 : ¥ 1,680
販売元 : 鳥影社
発売日 : 2004-11 |
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評論の名に値する最初の宮崎アニメ論 |
著者は外国のネットや雑誌に寄稿するアニメの評論家.僕は,始めて宮崎アニメについて本格的な評論を読むことができました.最初は『カリオストロ』の〈城〉の設定についていささかテクニカルな話(〈城〉の描き方の矛盾が細かく指摘される)なので,ああ,そういうヤツだったんだ,とがっかりしかけますが,さにあらず.このことが,「宮崎さん」のアニメ作成法を理解する伏線になっているのでした.宮崎アニメを順番に追いながら,作品の内容解説に堕することなく,それぞれの作品のできた背景など社会的視点も含めた議論を展開します.個々のトピック(たとえば「宮崎さん」の左翼性とか)は既によく知られたものですが,それらを有機的に組み合わせて一定の「宮崎さん」像を作り上げている点は優れています.また,宮崎アニメにおける肉親の欠如という問題を「宮崎さん」自身の生い立ちと思想の中に求めるあたりは,少々強引な気もしますが,おもしろい主張です.全体的に宮崎アニメのストーリィ構成には批判的ですが,これまで誉められすぎていて欠点が看過されてきていたということへの反動もあるのでしょう.宮崎アニメのストーリィ破綻を救うために,著者は別のストーリィを提案しているところがあります.けれど,それがおもしろくない.これがなければよかったのに.ストーリィの破綻はおもしろさの本質だ(←ヴ王のセリフ?). 宮崎アニメについては評論めいたものがたくさんあり,僕もいくつか読んでいます.そして,少々失望してきました.それに比べると,読み応えがあります.大政翼賛的な(あるいは内容が理解できていないのに付和雷同的に誉めている)「評論」などに物足りない方はぜひ読みましょう.450ページ弱でこの価格は安いかも.
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『紅一点論』の後継者現る |
2ちゃんで話題になっていたので手にとってみたのですが。
あこれ読んだことある。以前どこかでネット連載してたもののバージョン・アップですね。懐かしさとともに445頁を一気に読み通せました。
トトロの設定への突っ込みとか(かなり説得力がある)、『もののけ姫』大ヒットの舞台裏の話とかは旧版といっしょだけど、監督の経歴紹介が格段に詳しくなっているうえに、データも豊富。引用だらけだという向きもあるかもしれないが、論文で引用は当たり前のことだし、そのうえでの補助線いっぱつ解法が随所にあっていかにもこの著者らしい。
魔女っ子アニメの歩みを良い娘をキーワードに整理していくところに『紅一点論』の影響あり。ミンキーモモは良い義妹でベルダンディーは良い彼女、木ノ本さくらは良い娘・義妹・彼女の融合だから受けたという結論には正直ウケタ。『魔女宅』のキキは良い娘→悪い娘に移る過渡期の魔女っ子で、セラムンは悪い娘系魔女っ子第一号とか、読んでいくと思わずうなずいてしまう分析はお勧め。
なんか発想が理科系っぽいのが文系の私のコンプレックスをちくちくしたのでひとつだけ減点!
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大ボリューム |
堂々445ページだが、意外なほど読みやすい。ルパン映画の話でまずはウォーミングアップさせてナウシカの胸が大きい理由を変わった切り口より論じ、ラピュタと18禁ビデオとの共犯関係論へと進んでいきます。
トトロを小説版との比較よりその欺瞞性をあばきたて、魔女宅の話題から女の子アニメの深層構造をあぶりだし、紅の豚で作者の思想遍歴を追い、もののけ姫でその制作方式の限界を指摘してきます。正直、かなりエグイです。
圧巻はやはりマンガ版ナウシカの解読でしょうか。データをもとに作者の内的コンプレックスにまで踏み込んでいく過程はスリリング。個人的には千尋のヒットの原因の分析が楽しめた。宮崎ブランドのからくりがあきれるほど明晰に語られていく。
でも、信者のひとにはおそらく耐えられない本でしょうね。きちんと読み通さずにあれこれ言い出す読者がいたら、それはまずまちがいなく「宮崎さん」信者の類です。
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アンチ「宮崎さん」の本 |
著者はヤフーやファンの掲示板等で話題になった方です。
宮崎監督の作品の本のようですが、作品の話はほとんどなく単なるアニメの話に終始している章(魔女の宅急便の部分が顕著)もあり、誰向けの本なのか著者にも整理できていないという印象です。
(著者はマニア向けにはしたくなかったようですが。。。)
ヤフーで話題になった、もののけ姫、カリオストロの城のペース配分についても記述がありました。この本の説明だけでは、90分以下の作品や3時間近い作品は評価不能ですね。他の宮崎作品が同じ基準で評価されていないのもそのためでしょう。
400ページ超のボリューム。最後まで読む気になりませんでした。
(なので、このレビューは内容一部に関する内容です。)