何が映画か―「七人の侍」と「まあだだよ」をめぐって
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人気ランキング : 128,950位
定価 : ¥ 2,205
販売元 : スタジオジブリ
発売日 : 1993-08 |
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最近では中々の良書。 |
ドン黒沢監督と書生宮崎監督…(変な意味ではない、面白く捉えるとということで)、という感のある対談集で、演出において意外なほど貴重なことが収録されているには大変驚かされた。それは両者の性格が反映しているのだろうか、読者、お客様に対して常に親切極まりないお二人だからであろう、撮影現場の裏話など満載だ。
また親切にも、インタヴュー中かなり聞き手に回ってしまった宮崎監督の対談を終えた単独のインタヴューがあり、対談中にすんなり言えずに遠慮していた気持ちを重々配慮した構成で、この対談は、やはり、宮崎監督にとってとても貴重な体験だった、ということを語っていると思う。
帯には、演出家を目指す人へ、というメッセージコピーがあるが、これも誇張ではない。日本を代表する演出家が「撮影現場」を余すところなく語ったものである。どれだけ大変で、どれだけ学ぶか、と。
本書はその意図では十分に成功している。後は、両者の残した作品、また、それに対するちょっとしたガイドブックがあれば、あなたも演出家…、とはいかなくとも、それなりの気持ちは理解できると思う。
最近の中では大変な良書に出会いました。両巨頭の作品を観る上でもより深く考察できる代物であると思います。黒沢監督が亡くなられて久しいのですが寂しい感じがします。
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黒澤映画が見たくなります! |
つん読の山の一冊で、もっと早く読むべきだったと後悔。
宮崎駿さんと黒澤さんの対談なのですが、黒澤さんの映画にほとばしる愛情がとてもよく伝わってきます。
また、甲冑などの時代考証に詳しく、七人の侍の三船敏郎演じる菊千代の兜が国宝級であったことなど知られざる黒澤作品の秘話・苦労話、満載です。いい写真がたくさん載っていて、特に三船敏郎の精悍な写真は見ごたえあります。
いい監督、いい役者、いい映画屋がいた時代があったんだなとCGだらけの現在の映画界にうんざりしているマムはため息をつきます。
香川京子さんを誉めてる黒澤さんかわいいなあと思いますし、宮崎駿さんが黒澤さんをとても尊敬していらしゃるのが対談ににじみでていて以外でした。
久し振りに黒澤作品見よっかと本を閉じて思いました。
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黒澤映画の撮り方がわかる一冊 |
云わずと知れた世界の名監督、黒澤明と宮崎駿の対談本。この対談は御殿場の黒澤邸で行われたものであり、黒澤監督の映画作りの話がメインになっている。また本の終わりの方に、対談を終えた宮崎監督へのインタビューと「七人の侍」で助監督を務められた廣澤榮のエッセーが収録されている。
この本は黒澤監督と宮崎監督の対談ではあるが、実質黒澤監督への宮崎監督によるインタビューとでも云うようなもの。話題の最初こそ宮崎監督が色々話を持ち出すが、結局は黒澤監督の一人語りになってしまう。対談の設定者の意向なのか、黒澤監督が宮崎監督の話を少し無視し気味に喋るのは仕方がないことではあるが、もうちょっと宮崎監督のことも喋って欲しかった。しかし、そのお蔭で色々と黒澤映画の作り方とでもいうようなものを聞かせてもらうことが出来る。廣澤榮助監督の話を読んでもわかるように、黒澤監督の細部への徹底的なこだわりがあの圧倒的なリアリティーを生んでいたのだ。「神は詳細に宿る」とは正にこのこと。そして、少なくとも、この細部への徹底的なこだわりだけは宮崎監督にも通じると云えるだろう。わからない程の細部にまでこだわらないことにはちゃんとしたものは出来ない。これは映画でも音楽でも同じだ。このことを改めて実感させられる一冊である。
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NHKによる黒澤明と宮崎駿という近代日本映画界の両巨頭の対談集 |
ほとんど黒澤監督の昔話ばっかりなんですが、最後の宮崎監督への単独インタビューは遠慮がちにもハッキリと自分の考えを述べていて面白いかったです。
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両巨頭の静かな対決 |
宮崎さんと黒澤さんの対談と、宮崎さん単独へのインタビューで構成されているが、よく読むと非常にスリリングな緊張感というものが感じられ、さすが両巨頭だと感心してしまった。
対談では宮崎さんが黒澤さんに色々と質問を行い、黒澤さんが答える中に宮崎さんが絡む、という図式だが、インタビューで宮崎さんは「黒澤さんは尊敬しているのえで、おっしゃった事を目の前で否定したりはしない」などと吐露されている。つまり、尊敬しその才能をお互いに認めあっていても、やはり同業の、それも芸術家同士は、やはりライバルというか、切磋琢磨しあう間柄でしかない、という厳しくも当然のことを思い起こさせてくれる。
この本の出版後、宮崎さんも世界に冠たるアカデミーを受賞され、今度は多くの若手に!敬される立場になるだろう。そのときに、やはり黒澤さんも味わったであろう、孤高ゆえの孤独、を感じるのであろうか。
そんなことを考えると更に興味深く読める刺激的な対談集である。