ユング自伝―思い出・夢・思想 (1)
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人気ランキング : 97,616位
定価 : ¥ 2,940
販売元 : みすず書房
発売日 : 1972-06 |
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ユングの爆発的な内的体験が語られている! |
自伝と呼ぶにはあまりにもかけ離れているが、かけ離れていることの良さを堪能できる不思議な本。
元々のタイトル、英訳では「Memories, Dreams, Reflections」、和訳では「思い出・夢・思想」。
「自伝」よりこちらの方が内容に合っているというのもおかしいが、そう感じる。
ユングの爆発的な内的体験が語られており、この内的体験無くして彼の心理学、思想も無かったと言っていいだろう。
ユング心理学、思想の真髄である。
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文学的感動を与える伝記 |
「文学的感動を与える伝記」として吉本隆明がトロツキーのそれとともに上げていた。確かにめっぽう面白いが、真に受けると危険。殆ど死後の世界にとんだり守護神に会ったりしてRPGの世界。ユングの他の本はすべて落ちが同じなのでこの書に勝る面白いものは見つからない。
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ユングによるユングの自伝 |
やはり心理学者の自伝には特別なものがあると思う。彼の人生そのものがその理論、思想、方法論に通じているから。
ユング心理学を、その成立の背景から、そしてその内部から窺い知るには、この本に優るものはないと思います。逆の見方をすると、この本は所謂、単なる自伝などというものではなく、ユング心理学をユングその人の人生から解き明かそうとするものとも言える。彼の彼自身による自己実現の道を。
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ユングは秘密にしておきたかったかもしれない |
ユングを研究する人々には、他の諸論文よりも読まれているだろう作品。
しかし、この作品は、ユング自身が自分の死後に出版することを条件に著した作品であり、本来彼が秘密にしておきたかった出来事、考えを多く含む。
彼の家系に牧師は多いが、同時に霊媒とも関係が深いこと。
彼自身幼い頃から、家系に多くの聖職者がいながらも、自らの方が神について詳しいと確信を持っていたことなど、少なくとも超心理学の範疇に踏み込みかねない危さが、この本の魅力であり、同時に出版を思い止まろうとしたユングの懸念の一つであったであろう。
有名なフロイトとの決別の理由なども、この内には書かれているが、しかしユングの視点から著されていることは、読者は注意しなければならない。
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ものすごい迫力! |
ユングの分析心理学に興味を持った人が,できるだけ早く読むべき本である。
ユング心理学についての入門書は数多く出版されているが,それだけでユング心理学の入門とするにはあまりに危険である。なぜなら,ユング心理学は,入門書という体裁の中で論じるにはあまりにも厄介な性質を持ち合わせているからである。主要な入門書には,その厄介でありながらきわめて重要な部分がすっかりこぼれ落ちてしまっているため,ユング思想の広大さを受け止める視野を提供してくれない。それはある程度やむをえないことではある。しかし,やはりユング心理学を学ぶなら,その厄介な部分を避ける訳にはいかないだろう。なぜならば,その厄介な部分にこそ,ユング心理学誕生の秘密があり,ユング心理学を理解する鍵があると思われるからだ。なぜ厄介かというと,ユング心理学自体のルーツが,ユング自身の内的世界についての濃密な個人的体験にあるからである。それを知るのに『自伝』ほどふさわしいものはない。
これまで入門書にしか取り組んだことがない人は,大急ぎで読むべきである。きっと,その迫力にユング心理学のイメージを変えざるをえなくなるだろうし,他のメジャーな心理学にはないその「計り知れなさ」によって,より強烈に興味を引かれること請け合いである。また,これからユング心理学の勉強を始める人は,河合隼雄著『ユング心理学入門』(培風館)と一緒に本書を読むと,ユング心理学に取り組む最低限の準備を整えることができるだろう。