こわれた腕環―ゲド戦記 2
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人気ランキング : 42,112位位
定価 : ¥ 1,680
販売元 : 岩波書店
発売日 : 1982-01 |
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優れたファンタジーは現実そのものである |
「喰らわれしもの」。死と虚無と暗闇に身を捧げる少女。陰でうごめく権力への策動。これはお伽話か?いやそうではない。諦めと絶望で若くして身動きもならない人など、周囲に目を向けるだけですぐに見つかるではないか。
この話は現実の世界を極度にシンプルにして我々の眼前に示すものだ。
虚無から脱出することは、どのようにして可能か。それを描写するのにこの本ほど美しくまたリアルであるものは、本当に稀である。
主人公であるテナーは、すでに罪人たちの命を奪ってしまっている。それに
気づいたとき、本当の悲しみと嘆きは始まる。にもかかわらず、彼女の脱出を
読者は心から祝福することができる。
暗黒の迷宮の中で生死の境をさまようゲド。しかし彼は言う。
「私はどうしたら生き延びられるか、考えつづけているのです」。
死を間近に直視しつつ、それにのっとられてしまわぬ力。たったひとりの少女が解放されるために、これほどの努力が必要なのだ。
精神的に、あるいは肉体的に病につきまとわれるものを、強く励ます傑作だと思う。
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決意と困惑 |
隠れ名作ファンタジーの二作目。
一巻は主人公であるゲドの成長が描かれましたが、こちらはゲドとは違う国に住む、違う人種の女の子の成長が描かれています。
決められた道、決められた運命、幼い頃からその心も体も縛り付けられていたアルハは一人の魔法使いと出会い、テナーとして生きる事を決意する。
しかし決意には困惑と苦痛が伴います。
一巻に比べ、当たり前と言えば当たり前ですが、心理描写が多いです。
テナーの心が、地下の暗黒の中で火のように動き回ります。
広い世界へと出たテナーの姿は、四巻の「帰還」で見る事ができます。
ここまで読んだら、続きを読むしかないでしょう!
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味わい深くて手放したくない一冊 |
ゲド戦記シリーズの中で最も怖い、暗い空気が漂うのがこの「こわれた腕環」ではないかと思います。ゲドはなかなか登場せず、「喰らわれしもの」――すべてを犠牲にして闇につかえる巫女、アルハを中心に物語は進んでいきます。このアルハの驕った態度といったら、「影との戦い」でのゲドのようです。
しかし「こわれた腕環」に登場するゲドにはもうそのような傲慢さはありません。ゲドは闇にとらわれた少女を光の中へ救い出し、目を開かせるのです。テナーという名前を取り戻した少女のとまどいもよく伝わってきます。私たちも地下の迷路で息を殺せるほど、主人公の二人に寄り添える、すばらしい描写にあふれた一冊です。
これはただのファンタジーではないと思います。味わえば味わうほど美味しい、永遠にそばに置いておける本だと思います。
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女性の冒険物語 |
1巻を読了した人は、まず例外なく2巻を一気に読破するはずです。
1巻はゲドという少年が挫折しながらそれを克服して成長する物語とすれば、2巻はアルハ(テナー)という少女が自立し、自分を確立する物語です。
ル=グィンは女性作家で、心理描写においてはおよそSF作家離れした深みを持っています。1巻に比べると2巻の舞台はスタティックで、アルハの内面描写(心理的葛藤)に多くの時間が割かれますが、これは、実は多くの少女が成長において共通して体験する、「自立への葛藤」を語ったものであると思われます。
アルハの場合、ゲドとの出会いという事件において、「闇」に支配された幼女時代から思春期を通り過ぎて一個の女性までの「羽化」が一気に進行し、巻頭では「客体」であった女の子が一気に「主体」となり、ゲドも含めた2人の命をかけて、自我の確立と自立のための戦いが爆発し、一気呵成に進行していきます。
しかし、テナーの自立への葛藤は、2巻のラスト手前で、もう1ひねり、複雑な展開をします。これはもうそれだから女の子なんだなあ(男は単純だ(^^;))ということで、必見です。
女の子が読めば、物語の暗喩の数々が、親や周囲の束縛から巣立っていく時の自らの不安や葛藤に重なり、思わず同化してしまうだろうと思います。
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『影との戦い』とはかなりテイストが違います |
一作目では若々しく力に溢れていたゲドが、本作ではやや弱った状態で登場します。見えざる強敵との力比べに疲弊するゲドと、巫女たるアルハの思いが交錯しながら物語りは進みます。二人が手を取って洞窟から抜け出す場面とゲドの魔法の光が暗闇を照らすシーンは大興奮!一気に読まずにはいられません。終わり近くにアルハ(テナー)が刃物を取るシーンにはヒヤッとさせられましたが、物語はHAPPY ENDを迎えます。大人になって読み返してもかなりの読み応えがある本です。魅力的ですね。