最後の錬金術師カリオストロ伯爵
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定価 : ¥ 2,520
販売元 : 草思社
発売日 : 2004-09 |
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稀代のペテン師? それとも、ヨーロッパの赤ひげか? |
新興宗教のカリスマ教祖、美女と野獣、金と権力者たち、奇跡の医術、不老不死、敵対者からの嫉妬と告発、詐欺まがいの行為がばれて高飛び、各国を転々とした挙句の獄死、そして伝説となった男の生涯、まるで現代のマスコミが喜びそうな話ですが、本書は、それらを地でいった18世紀の『冒険家』カリオストロの波乱に満ちた人生を、シチリアのチンピラ時代から、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、スイス、そして終焉の地イタリアまで、丹念に追ってゆく内容です。裸一貫で成り上がり破滅する人間像に、錬金術、オカルト、秘密結社、フランス革命が関係することで、カリオストロの生きた時代の猥雑さとその矛盾したキャラクターに、エンターテイメントと歴史の暗部を覗き見る面白さが加わって大変興味深く読めました。カリオストロの口八丁手八丁でトラブルを切り抜ける様子は、作者の文章の読みやすさもあって引き込まれ、図版の少なさを充分補っています。特に、マリー・アントワネットを失墜させた「首飾り事件」では、裁判の非難合戦でカリオストロも食ってしまいそうなラ・モット夫人の強烈さに圧倒されました。