はじめての宗教学―『風の谷のナウシカ』を読み解く
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人気ランキング : 74,530位位
定価 : ¥ 1,890
販売元 : 春秋社
発売日 : 2001-06 |
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忘れていた何か |
縁あって正木先生の講演会を聞きました。テーマは「千と千尋」でしたが、気付かず見過ごしていたシーンにある必然的に作られたメッセージを先生が読みといてくれて、とても新鮮で、楽しかった。
その時この本に出会い、読み始めました。こむずかしいことは私には言えませんが、日本人が表で宗教を廃して来たことで今の子供たちに伝え損ねた「忘れていた何か」を取り戻せるきっかけになる本だと思いました。
こんな奥深いアニメを作った宮崎さんに脱帽だが、読みといて世に奥深さを知らしてくれた正木先生に感謝!
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タイトルに偽りにあり |
ナウシカを読み解くと謳いながら、実際にはナウシカを枕によくわからない宗教論がえんえんと続いていく代物なり。
ひさしぶりに金返せーと腹の底から思った。誇大広告の極地。JAROに取り締まってほしい。
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「はじめての」だからしょうがないか |
「ナウシカ」は、人間性の底深さを有しつつもエンタテインメント性を些かも損なっていない、あるいは、表層的に愉しませるものでありながらも穿ちうる問題を多く孕んでいるという、その意味ではこのテの問題を探る絶好の機縁となるテクストだと思います。けれども・・ナウシカの処女性は重要であるにもせよ、王蟲がいつまでも幼生の状態であり続ける(蝶などのように「変態」を果たさない)、したがってナウシカと相通ずる「童子王」的存在なのだという解釈など、どうだかなあ、と思ってしまいます。マンガ版「ナウシカ」などには、作者宮崎駿自身の峻烈なる思索の軌跡が見てとれる、それだけに、参照や取っ掛かりとしての「ナウシカ」ではちょっと不満。
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ナウシカの世界から宗教学の世界へ |
本書は「『風の谷のナウシカ』を読み解く」と題されていますが、『風の谷のナウシカ』を宗教学の視点から解読するのではなく、『風の谷のナウシカ』の物語を「引き出し」にして宗教学を学んでいこう、という本です。
例えばナウシカの着ている服は青色ですが、キリスト教において青色はどのような意味を持っていたのか、黒色だった聖母マリアの服はなぜ青色へと変遷していったのか、といった具合にナウシカの世界から宗教学の世界へと導いてくれます。
宗教学だけでなく雑学的な知識がふんだんにもりこまれていますから、著者の筆の勢いにのって宗教学の世界へと引き込まれることは間違いないでしょう。
また、付録の「宗教的な智恵とエコロジー」では、エコロジー小史を簡単に追いつつ、各宗教にお!!!る自然へ姿勢を知ることができます。
著者がチベット密教が専門のためインド仏教にかたよりがちな点もありますが、タイトルの「はじめての宗教学」の名に恥じない宗教学の入門書ではないでしょうか。